【塩ゲーレビュー】ファンキーモンキー(ポリシー)
しょっぱいのはお好き?
突然だが、自分は“しょっぱい”ゲームが好きだ。
パチもん臭がぷんぷんと漂う、“しょっぱい”としか表現しようのない、そんなゲームに悲哀を感じてしまう。そして、当時は見向きもしなかった“しょっぱい”ゲームたちを勝手に“塩ゲー”と呼び、今ではひそかに収集している。
今回紹介する“ファンキーモンキー”もお気に入りの塩ゲーのひとつだ。
パッケージ裏面に印刷されたサンプル画面を見れば、かの名作“ロードランナー”のパクリであることは一目瞭然。パッケージに描かれたサルのイラストといい、漂う“塩ゲー臭”に、ゲームに飢えていた少年ですら手を出しかねていた一品である。
盆暮れ正月の長い休みに入ると、馴染みのレンタルソフトショップでは、大抵のソフトがレンタル中となるが、この“ファンキーモンキー”だけは誰からも見向きもされずに、棚の奥底で借り主をひたすら待ち続けていた。
ただ、オリジナルのロードランナーにはない、画面の一部を隠すように配置されていた赤い四角のエリアがすごく気になっていたことは確かだ。
あれから30と数年。そんなゲームもあったことなど、すっかり忘れていた矢先に、たまたまファンキーモンキーを手にする機会に恵まれた。あの時、疑問に抱いた赤い四角の謎が今明かされるのである。
変態的なオペレーション
さて、このゲームの主役はタイトルのとおり“モンキー”である。ある日動物園から抜け出したひょうきんもののモンキーを操作し、飼育員をうまくかわしつつ迷路上に置かれたすべてのりんごを獲得すれば1面クリアだ。
基本的なルールは見たまんまロードランナーと一緒なので、すぐに理解できるはずだ。
だがしかし、そこはパチもん臭のする塩ゲー、一筋縄では遊ばせてくれない。問題はキー操作にあった。
PC-8801を始めとする、当時のパソコンゲームの多くはテンキーでキャラクターを操作するのが定番だ。テンキーの2,4,6,8は常にジョイパッド代わりに利用されている。
ところがファンキーモンキーでは、大方の予想を裏切り「J,L,I,K」キーによってキャラクターを操らなければならない。テンキーのなかったApple IIじゃあるまいし、なぜこのキーアサインにしたのかが謎である。
1万歩くらい譲ってテンキーを使わないのはまだ許せる。自分の左右に穴を掘るキーは常識の範囲内で考えるのなら「Z,X」キーが妥当だと思うのだが、ファンキーモンキーではU,Oキーを使わなければならない。つまり、片手でキャラクターの移動と穴を掘るオペレーションの両方が求められるのだ。
しかも、このファンキーちゃん、もといモンキーちゃんは一度動かすと、止まることを知らず動き続ける。ゆっくり考えるヒマも、手元を確認する余裕もなく、ただひたすら画面を駆け回りりんごをゲットしなければならない。脳が劣化したおっさんには、かなり厳しいゲームだ。
赤い疑惑・・・
さて、そしていよいよ積年の謎であった「赤い四角の謎」について迫ろう。もちろん本家ロードランナーには、このようなベタ面は存在しない。まず重要な点は、自らこの赤いベタ面エリアに突入するとモンキーは死んでしまうということだ。
では、どのように利用するのか。それはベタ面を移動させることで、モンキーちゃんを隣接するエリアにワープさせることができる仕組みになっていたのだ。
ベタ面を移動させると、ベタ面の移動先にモンキーが居た場合にモンキーはベタ面が元にあったエリアに転送される。この機能をうまく利用することで、通常ならば取ることのできないエリアにあるりんごを取ることができる仕組みになっている。
赤いベタ面エリアはキー操作によって移動することができる。Eキーを押すとベタ面は下に移動し、Dキーで上に移動する。Sは右でFが左だ。
「だがしかし、まてよ・・・。赤いベタ面を上に移動させたかったら、普通“E”キーだよな・・・?」
右手によるモンキーのワンオペに加えて左手でのベタ面移動、しかも左右上下が逆というトラップ。ロードランナーもどきと舐めてかかってくるユーザーをバッサバッサと切り倒してくれます。
「訴えられないために、オリジナルにはない機能を、無理くり付け加える必要があったんだろうなぁ」とゲスな勘ぐりをしてしまうが、そんな余計なルールを考えるくらないなら最初からオリジナルのゲームを作ればいいのにと、ついつい考えてしまうのはイケないことだろうか・・・。
後付けの言い訳か、はてまた仕様か・・・
他にも落とし穴がないかどうか、マニュアルをよく読んでみることにしよう。マニュアル・・・と言ってもワープロでプリントされたコピー用紙が1枚、同封されているだけなのだが、謎だらけなゲームには、無人島でのサバイバル教本なみにありがたい。
その紙切れには「どうしても逃げられそうでないときは、絶妙のタイミングとテクニックですりぬけることもできます。」とある。
「んん? どういうことだ?」
試しに、わざと飼育員に向かってモンキーちゃんを操作すると、たしかに何回かに一回は当たり判定を無視してすり抜けることができた。
何かのタイミングがあるんだろうけど、その謎はついぞ解明することができなかった。というか、そこまで、このゲームをやり込む気力はなかった。
総評
30数年越しに、初めてプレイした“ファンキーモンキー”だったが、実はそんなに悪いゲームではないと思った。見た目がそのまんまロードランナーなので、パチクローンに思われがちだが、実際にプレイしてみると、ワープエリアをうまく使わないとクリアできない面があるなど、ロードランナーよりも遥かに厳しく、考えさせられる内容になっている。
まったく違うゲーム・・・とまでは言えないけれど、まったく同じとも言えない不思議な感覚を味わうことができるだろう。
機会があったら、ぜひ試してみてもらいたい1品だ!
ファンキーモンキー
メーカー:ポリシー
発売価格:8,800円
対象機種:PC-8801
しょっぱい度:★★★★☆
操作性:★☆☆☆☆
難易度:★★★★☆
オリジナリティ:★★☆☆☆