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史上最大の作戦!文字化けを修理せよ! PC-98DO

史上最大の作戦!文字化けを修理せよ! PC-98DO

V30ベースのPC-9801にPC-8801MH相当のロジックを詰め込んだ、一粒で二度美味しいマシン。それがPC-98DOだ!
前面パネルに配置されたスイッチで98モードと88モードを切り替えることで、あるときはPC-9801VMとして、そしてまたあるときはPC-8801MAとして楽しむことができる。もちろん、88モードにはV1S、V1H、V2を切り替えることも可能だ。

そして今回、久しぶりに完全ジャンクの98DOを手に入れることができた。実は98DOを買うのはDO+も含めて4度目だけど、本格的に修理をするのは初めての経験だ。果たしてうまく修理できるだろうか。

■まずは電源ユニットから

今回入手した98DOは電源がまったく入らないとのことだったので、まずはここから攻略しよう。98DOは電源部、FDD部、マザーボードとそれぞれユニットで構成されているので、88に比べると分解がとっても楽ちん。大きなネジをすぽぽんと取り外して、電源やらFDDやらのケーブルを外すだけで、あっという間にマザーボードまで到達することができる。そこまでの所要時間はおよそ5分程度だ。

98DO分解後

見かけの割には分解が簡単^^

取り出した電源ユニットのカバーを外すと、あの液漏れ独特な香ばしい匂いが漂ってきた。ぱっと見ではわからないけどコンデンサが液漏れしてることはほぼ間違いなし。電源ユニット内で摩天楼のようにそびえ立つデカコンデンサをポコポコと取り外してみると、やはりいくつかのコンデンサで液漏れした跡が見つかった。

かねてからかき集めておいた新品のコンデンサに交換して、コンデンサのプラスマイナスを間違えていないかどうか最終確認をしてから再びスイッチョン!
マザーボードに直刺ししたFDDエミュがけたたましく動き始め、88モードでN88-DiskBASICを起動することに成功、電源問題はこれで無事解決することができた!

作業的にはあっけなく直ったけど、実際の修理よりもコロナ禍で自宅に引きこもったまま容量がぴったりのデカコンデンサを調達しなければならない方が大変ですた(涙)

電源ユニット

デカコンデンサはデカイだけあって高い;;

ともあれ88モードが概ねOKだったので、引き続き98モードでの動作確認。N88-DiskBASICからMS-DOSに変えて、またまたスイッチョン! こちらも問題なくファイルを読み込んでいるので、気をよくしていると、起動されたMS-DOSのなにかがおかしい! よくよく見てみれば1バイトの文字は正しく表示されているけど、2バイト文字が怪しいギリシャ文字に置き換えられてるではありませんか;;

もしかしたら、ディスクイメージが壊れてるのかも?と思い、今度は実FDDを繋いでから、本物のフロッピーディスクを使ってMS-DOS 5.0Aを起動してみる。だけど結果は同じ。さらにMS-DOS3.3、N88-DiskBASICを起動してみるが、やっぱり2バイトコードの部分だけが文字化けを起こしてしまっている。

98DOの文字化け

謎のギリシャ文字;;

またしても88モードに切り替えて動作確認してみると、88モードでは漢字も問題なく表示されている。ゲームも起動したし、FM音源の音色も美しい。ん?そういえば起動時のピポ音も聞いてなかったような気がする。再度98モードに切り替えてMS-DOSを起動させてみるとやっぱりピポ音は聞こえていなかった。

これまで何度か98DOを購入し、ニコイチ程度の修理をした経験はあるが、文字化けは初めての現象だ。そこでさっそく情報を収集すべくgoogle先生に「#PC-98DO 文字化け」でお伺いをたててみることに…。

■98DOの文字化けは割と有名だった!

Google先生の検索結果を見てみると、まず98DOの文字化け問題は割とメジャーな問題であることがわかった。さらに情報を収集してみると、以下の2つのケースで文字化けを修復した人がいることが判明した。

【修理成功ケース①】 二次電池付近のICのソケットを交換
【修理成功ケース②】 二次電池付近のコンデンサを交換

ここでもやはりキーワードは「二次電池」だ。今回入手した98DOは、ホコリも少なく内部的にはキレイだと思っていたけど、それでも二次電池付近には緑青がはびこり、回路に断線があった。NECのレトロPCを使う限り、この呪縛からは逃れられない運命なのだろうか。
ともあれ、諸悪の根源である二次電池を取り外し、断線状況を確認する。見たとこ大きな断線箇所は2つだ。断線処理をしつつ、上記2つの成功例を試してみることにした。

■成功例その① ICソケットの交換を試す

文字化け解消の成功例その①は「二次電池付近のICソケットを交換する」という方法だ。ソケットの場所はすぐにわかった。

文字化けの修理に成功したブログでは、このソケットの足に緑青がはびこり、一部腐食している状態だったと書いてあったので試しにICをソケットから抜いて見ると、意外にもサビもなくキレイな状態だった。

ソケットIC

囲みの部分が例のソケットIC

うーん…これは今回のケースには当てはまらないのではないかと思いつつも、とりあえずソケットを交換してみたが、やはり思ったとおり症状は変わらずという結果だった。ついでに他の電解コンデンサやトリムコンデンサまで交換してみたが、結果は変わらず。

ただひとつ判明したのは、このソケットに刺さっているICが98の漢字表示に重要な役割を果たしているということだ。試しにソケットを外した状態で起動してみると、文字化けどころかすべての2バイト文字が豆腐になってしまった。

豆腐文字

豆腐文字…。やはりここが漢字表示の鍵を握っていることは間違いない!

■成功例その② コンデンサを交換してみる

続いて、もう一つの成功例である二次電池付近のコンデンサを交換してみた。98DOは88に比べて電解コンデンサの数が少ないので、こちらも簡単に特定することができた。サクサクっとコンデンサを交換し、再度スイッチョン! 結果は変わらず…。これで、今回の文字化けが2つの成功例ともに当てはまらない第3のケースということが確定したわけだ。

コンデンサ

囲みの部分が例のコンデンサ。今回は関係なかった。

■残るは断線処理しかないが…

となれば残るは断線だ。二次電池のあった場所では、いくつかのラインが集中している。それらの配線を大まかにA群とB群とに分けてみると、目視ではB群の方が断線状況がひどいことがわかる。
ちなみにA群、B群ともにスイッチ側の終端は、裏側に回っていて、一部は例のソケットICに繋がっているようだが、もう一方の終端は基板の反対側まで伸びていて行き先は様々だ。

そこで、まずは被害の大きいB群の断線から処理していくことにした。断線をチェックしては繋げて表示確認、という作業をひたすら何度も繰り返すこと3日間…。結論から言うと文字化けは直らなかった(涙)

断線処理

苦労に苦労を重ねた断線処理。無駄じゃなかった…と思いたい。

■アプローチを変えて、再度チャレンジ

3日間断線と格闘したものの修復できず、なにより髪の毛よりも細いポリ線をゴマ粒よりも小さいハンダ点に繋ぐ作業は、老眼の身にとってはかなり苦痛だった;; 「もう、このまま88MAとして使うのもいいかも…」と心が折れかけたりもしたけど、やはり諦められずに再度チャレンジすることに。

B群に続いて、今度はA群の断線チェックを行うわけだが、同じ方法ではラチが開かないと判断。そこで、「ソケットICに問題があるのは明確なのだから、そこを中心として、結線チェックしてみよう」という事になった。

調べてみると、どうやら問題のソケットICは隣にある大きめなICに繋がっている線が多いことがわかった。そこである仮説を立ててみる。つまり、「隣接する大きめのICはおそらく漢字データを含むBASIC-ROMで、ソケットに刺さっている小さなICはキャッシュのような役目」をしているのではないかと。

BASIC-ROMからのデータが正しくCPUに送られて(もしくは受け取れて)ないことが原因じゃないのかな~と思い、今度はBASIC-ROM(と思われる)方の足をひたすら追い続けてみた。

■ついに原因箇所を特定!!

その中でひとつ、断線に関連し、直接CPUの裏側の足に通じている線を発見。試しにニクロム線で双方の足を繋げ、再び電源その他を装着してスイッチョン!

原因特定

ついに原因となる断線箇所を発見!!

ちゃんら~ん!! なんと文字化けが直り、正しい漢字が表示されるようになりました!! 推測は正しかったのかもしれない。ちなみに同じ型番のICがさらにもう一つあるので、こちらは88用のBASIC-ROMではないかと推測。88は元から壊れていないので、これ以上深追いしないほうがいいだろう。

正しい表示に

見慣れた美しい日本語が戻ってきた!;;

表面のコートを削ったあとは空気に触れて錆びつかないよう、レジンを塗り塗りしたあと硬化させて後始末。その後キチンと組み立てて、再度動作確認。ドライブの調子もいいし、88,98の切り替えも問題なし!

なんだかんだと二週間くらいかかったけど、粘ってみて良かった。嬉しさもひとしおのPC-98DOでした。今回も大事に使ってくれる人にもらわれていくんだよ^^